
志村けんさんが亡くなった。
全員集合で育った昭和世代としてはかなり大きなショック。平成の子どもたちも「バカ殿様」や「だいじょうぶだぁ」、「天才!志村どうぶつ園」などの番組で大変お世話になった。
朝ドラや主演映画など、俳優としての活躍が控えていただけに残念でならない。名脇役として晩年を過ごしたいかりやさんに負けない、しぶい演技を見てみたかった。
こうして志村さんが亡くなったことは自分のようなシニア世代にとって新型コロナを自分事として怖れる意識を植え付け、外出を控えたり、感染しない様に努力をする人が多くなっただろう。きっと新型コロナ肺炎によって重症化する人たちを少しでも減らすことにつながったはずだ。
その一方、高齢者のみなさんがコロナを怖れて外出を控えると認知機能の低下や運動不足による筋力の低下などの不安が生じる。それは認知症になった母の介護体験からも痛いほどわかる。
引きこもりがちな暮らしから発症した母の認知症
東日本大震災のショックから認知症へと移行をしていった父を在宅介護していた母。その後、お風呂場で父が倒れたことで、在宅での介護をあきらめ、介護施設にお世話になることにした。「父を施設に預けながら友だちと遊ぶことなんかできない」。そう言って母は引きこもりがちになった。歌に、踊りに、スポーツに、とても活動的だった母が一人で過ごすことが多くなったのだ。自分たちも仕事を抱えていたため、母の変化に気づけない。日を追うごとに認知機能が低下し、父と同じく認知症を発症してしまった。
そうした母の認知症の介護を体験して、あの時にもっと積極的に母に働きかけて、友だちと一緒に運動をしたり、歌を歌ったり、会話を楽しむような時間を守ってあげられなかったのか。そう反省することが多い。
新型コロナによる外出の自粛によって感染のリスクは抑えられても、多くの高齢者の認知機能が下がってしまうのではないかと懸念してしまう。
コロナで外出が減れば高齢者の認知機能は衰える!?
自分も参加する日本認知症予防学会の浦上克哉理事長もその心配を隠さない。3月29日に山陰中央新報社に「コロナで外出減る今こそ 運動 知的活動 会話」というタイトルで認知症を防ぐためのメッセージを寄せている。
浦上先生によると具体的な対策はこうだ。
運動 体を動かすと脳の神経細胞を活性化させるホルモンが多く分泌される。有酸素運動や筋力運動が中心。スクワットは下半身の筋力維持に役立ち、転倒予防にもなる。椅子に座った状態で足を交互に持ち上げてもよい。
知的活動 頭を使って指先を動かすことが重要。トランプや神経衰弱、クロスワードパズル、折り紙、お手玉、川柳などがよい。
コミュニケーション 感染を予防しながらコミュニケーションをとることを心がけたい。電話やメール、インターネット電話など、家族の協力を得ながらコミュニケーションの機会を増やそう。
コンテンツフォーケアでも音楽などを活用した認知症予防の取り組みを進めて来た。最近のおススメは手拍子リズムだ。
童謡にあわせて手拍子をするだけでリズム感が良くなるし、運動と知的活動をあわせたような効果がある。是非、試して欲しい。
童謡にあわせて楽しく手拍子 リズムトレーニングで脳を健康に!
研究者も認める笑いの効能
志村けんさんは死ぬまで人を笑わせることにこだわった。
近年、「笑い」にも認知症予防の効果があると考える研究者も多くなり、「笑い」と認知症に関する研究が盛んに行われるようになっている。
志村けんさんがこの世に遺したのは、理屈のいらない「笑い」であり、そして笑顔だった。
志村さんのためにも大いに笑って自宅での時を過ごしたいものだ。
上岡 裕(日本認知症予防学会広報アドバイザー)