「フレイル」
「シニア」
「ウェルネス」
・・・と、いきなりカタカナ用語が並んで、ドキッとしますね。
「シニア」はだいぶ一般的。「年上の人」という意味もありますが、ここでは「高齢者」。
ちなみに「高齢者」に一定の定義はありません。WHO(世界保健機関)では「65歳以上」としています。日本では、国民健康保険の枠組みで、65歳以上が「前期高齢者」という言葉が使われます。
「ウェルネス」は、「健康」と訳されることが多いです。「ヘルス」も健康と言われるので、その違いが微妙ですが、先のWHOは「身体的、精神的、スピリチュアル、社会的に完全な良好な状態である」と定義しています。「ヘルス」は「良い状態」であり、病ではないということ。パーフェクトなゴールです。(・・・とはいえ、そんな健康状態、なかなかあり得ません。なのでゴール、目標です)
これに対して「ウェルネス」はゴールというより、「状態」。病気であれば治療を含みます。範疇は治療に止まらず、「予防」や「健康を促進させる」という概念も含みます。「未病」という発想も「ウェルネス」があってのことかもしれません。
「シニア世代のウェルネス」というのは、
「高齢者(65歳以上)の健康促進、予防」といったところでしょうか。
さて、私たち人は身体も脳も、心も50年以上休むことなく(心臓や休みません、呼吸も止まらず、脳も常に動いています)使っていれば、「経年劣化」していくと、今の医学では考えられています。それが「老い」です。「高齢化」です。
そんな医学的な定義よりも、50年生きていれば、過去の自分と体力の違いをしみじみ実感します。いろんなところに生じた不具合が否応なく実感を迫ります。
まず「視力」、遠近が変わったり、視界が芳しくなかったり。
「腰」や「膝」なども、なんとく始終気になったり。
心臓や血管、他の臓器などにも何か症状が現れたりする人も少なくありません。
「何かしら」を持って、特に何も言わず生活してる人がほとんどです。ツルツル、ピカピカの「グッドヘルス(良い健康状態)」の人は、あまり見かけません(笑)。
なので、新たな病気を防ぐ、これ以上ひどい状態にしないという「予防」や「現状維持」(あわよくば「促進」)を考えて、生活を見直そうと意識し行動し始めます、私たちミドル世代は。
そして「フレイル」。
これは、日本では、「東京大学高齢社会総合研究機構」という立派な、国家も含んだ大学の研究機関の機関長である飯島勝矢先生が提唱した言葉、概念と言われています。
元々は英語の「Frailty(虚弱、弱さ、脆さ)」から。
高齢期に起こる心身の状態を特に指し、介護保険制度にスケールを合わせるなら「要支援」「要介護」前あたり。「元気なシニア世代」――自由に自分たちで旅行、外出、外食やショッピング、趣味を謳歌できる世代のあたり、ここのど真ん中の人たちは「Non-Frailty(健康)」ですが、ここをピークに、ちょっと時間を経ると外出や人と会うのが億劫に感じ減っていきます。この時期に大きな疾患(大病)や怪我などをすると、一気に「弱」っていってしまう確率が上がります。この元気な時期後、ちょっと活動量が減っていく微妙な時期の人が「フレイル」の対象となっています。
これは一概に年齢や介護保険の認定で縦割りできるものではありません。
個々違いがあります。
「フレイル」は、
まず身体的な状態。筋肉低下とも言われる「サルコペニア」や「ロコモティブシンドローム」。筋力が落ちて、長時間歩けない、立っていられない、立ったり座ったりがしにくくなるなど。それから「心理的・認知的」な面もあります。高齢者うつ、認知機能の低下などです。
そして「社会的フレイル」。経済的困窮などで一人で家に篭りがち、社会的繋がりがなく孤立してしまうことです。独居に限らず、家族と同居していても高齢者の孤食や孤立は起こりうる現実です。
この3つが歯車のように互いに噛み合いながら進行していくと、いつしか人の手を借りないと、日常生活が成り立たないようになってしまいます。
私たちは、親が元気な世代なら親に「いつまでも元気でいてほしい」と思うもの。
そして自分がその高齢期に近い、あるいはその世代なら、自分に、パートナーに「いつまでも元気で(いたい)」と漠然と思っています。
そのためには、「健康維持」「現状維持」のために、「ウェルネス」を考えたいもの。
ふだんの食事を自分で作っている人は食事や睡眠時間、運動など、自分でコントロールし意識し、努力したら良い状態を保てそうです。ところがこの一面だけでなく、専門家の間では特に「社会的」な側面を重要視しています。
つまり、人との会話、やりとり(そこから生まれる「やりがい」「責任感」などの気持ち)といった「社会的な繋がり」が弱まると、「心理・認知」「身体」が弱くなっていく、崩れていきやすいと見ています。
フレイルを図るスケール(尺)として
① ふだん運動している
② 趣味がある
③ 地域でボランティア活動をしている、地域活動に参加している
この3つの割合を「○」か「×」で回答してもらい、弱まる確率を図ると、
もちろん3つとも「×」が弱まる確率が最も高いですが、
① 「×」②③「○」よりも、①「○」②③「×」の確率が高いという興味深い研究データがあります。
そこから専門家は、「社会的な繋がり」の重要性を強調します。
個人でコントロールできること(食事や睡眠、運動)も大事だけれども、地域として、高齢期にある人々を地域でどう受け入れていくのか、何を担ってもらうのか、という視点が必要といいます。そうした考え方が、企業や自治体を交えて生まれています。
では、具体的にどんなことなのか、
この「フレイル」、続きはまた次回――
ということで、
60代が見えてきた世代(いま、まさに親や家族の介護をやっている年代)や60代に突入している世代は、「フレイル」、あるいはこの世代専用の「ウェルネス」をより意識し始めてよいお年頃のようです(いつまでも30代〜40代みたいな感覚のフィットネスやトリートメントでは、ちょっとズレが生じそうです)。
*『フレイル』について、このコロナ禍でのお家での過ごし方について小冊子PDFが、東京大学高齢社会総合研究機構より出ています。サイトでダウンロードできるので、気になる方はお手元に(http://www.iog.u-tokyo.ac.jp/?p=4844)
文:井上晶子
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