ここで、「『フレイル』という言葉を知っていますか?〜シニア世代のウェルネス〜」というテーマで、『フレイル』について紹介しています。今回は3回目。
『フレイル』とは、65歳以上の高齢期にある方の心身の健康全体を表す言葉として使われ、英語でfrality(虚弱)という意味から来ています。
「フレイル予防」という言葉を見聞きしたことがあるかもしれませんね。
「虚弱予防」・・・つまり「老化防止」というところでしょうか。
この「フレイル予防」「老化防止」は、
めでたく還暦を迎えられた方々は、意識し始めても遅くはないようです。
(もちろん50代、40代から取り組んでおいて損はないです)
さて、3回目の今回は「口」。
お口の健康を維持しましょう、です。
「食べる」「呼吸する」「話す」など生命維持や人間らしさを表す役割があるのが「口」。
中でも「食べる」は、「体内に取り入れる」「噛む(咀嚼)」「飲み込む(嚥下)」から成り立ち、歯の数、顎や頬などの表情筋、舌の動きなどが大切になってきます。
近年、自前の歯数、義歯利用と認知症発症との関係について、さまざまな研究結果から、
・歯数がある方が認知症発症のリスクが低い
・自前の歯がほとんどなく、義歯を使用していない人は認知症発生のリスクが高い
・自前の歯がほとんどなくても義歯を使用することで、認知症発生を抑制できる
ということが明らかになっています。
このような認知症予防の観点を含めて、高齢者のケアプランの中に「口腔ケア」が上がってくるのは、歯の数、歯の状態、噛む力、飲み込む力が、身体面、認知面のフレイルを握っているためです。
食べ物が体内に入る最初の入り口=歯 の喪失が咀嚼能力の低下を招く原因です。
咀嚼能力(噛む力)が弱くなる=噛めなくなると、
柔らかいものしか食べられなくなり、低栄養を招きます。
また噛まないことで唾液が減り、消化器官に影響を及ぼしたり口内の衛生が保てなくなり、病気を招く温床になります。
さらに噛めなくなることで、口を動かすことも減っていくと話すことも減り、対人関係など社会的側面が不活発になっていく可能性があり、家にこもりがち・・・一人で過ごす時間が増えていくと、メンタル面や認知機能に影響が出ます。
こうした負のスパイラルに入らないためにも、
早いうちから「お口の健康維持する」ことを勧めています。
そのために取り組めること
●しっかり噛む
●歯を磨く
:虫歯や歯周病は歯を失う原因。口の中を清潔に保つことで、虫歯や歯周病を防ぐことができます。義歯を使用していたらお手入れは必ず
●かかりつけの歯科医者さんを持つ
:歯をこまめに磨いていても、専門家の手を借りましょう。定期的に歯周菌の除去や歯茎などのお手入れもしてくれることで自前の歯を守り、長く使えることにつながります。
高齢期の親や親族、パートナーがそばにいて歯医者さんに通院できていたらいいですが、通院が大変であったら、介護サービスを受けていたら訪問歯科医師をケアマネージャーに相談、リクエストしましょう。料金は公的な高齢者保険で賄うことができます。
人生長く生きていると、若い頃に作った虫歯や折れた歯などで欠損している歯が1本や2本はあるもの。部分的に歯がないなら部分的義歯も最近は多くの種類があります(お値段もピンからキリまで)ので、部分的義歯を利用しましょう。そして残った自前の歯を守って使っていきましょう。それがフレイル予防の第一歩です。
そして、
おしゃべりしたり、笑ったり、歌を歌ったりするような口をよく動かすことも忘れずに。
参考文献
一般財団法人 日本口腔保健協会
文:井上晶子