
まだまだ先だろうとたかをくくっていた父の臨終。
その日に向けて大きくトキが動いていきます。
コロナ禍なので1親等の親族にかぎり、ガラス越しに10分の面会が許されましたが、そこを何とか孫に顔を見せてあげてくれないかと頼み込み、もう一枚のガラスを挟んで家族で面会することになりました。クリスマスも近い23日のことです。
母が父と同じ施設に入所してから9カ月。
コロナの感染対策で面会が制限され、父にも母にも会うことなく過ごしてきました。せっかくの機会なので母も一緒に面会させてもらうことになりました。
在宅の頃は「あなたは私の息子だったよね?」と自分の顔をのぞき込んでくるような状態だった母。
9カ月経った今ではもう家族の名前も忘れているかもしれない。
そんな予想は実際に会ってみると良い意味で裏切られます。
お世話になっている施設での介護、食事、リハビリが効果を発揮したのか、家族の名前までしっかりと覚えていて、依然と変わらない元気な姿を見ることができました。
昼寝の最中だったのか1週間前にくらべると元気がない感じの父。母はガラス越しに一生懸命に家族が見舞いに来たことを伝えようとしていました。
こうして父と家族との10分間の最後のお別れが終わりました。結局、家族にとってはこれが最後の面会となります。
翌日、父の葬儀を担当してもらう葬儀社を決め、クラスターを起こさないように、家族葬を選択することにしました。まだまだ先だと思いながらも、何かあった時のことを考えて落ち着かない夜を過ごしました。
文 / 上岡裕
認知症の両親の死に向き合うということ ~父の死の告知~ | ライツフォーグリーン
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