新型コロナウイルスのために数百万人が貧困に逆戻りしつつある。医療機関にアクセスできなくなり、子どもたちは学校に通えなくなっている。
国連のモハメッド副事務総長がこう発言したのは9月17日の記者会見だ。猛威をふるう新型コロナウイルスの感染拡大によって世界的にSDGsの取り組みが後退していることに懸念を表明した格好だ。
国連 SDGs コロナで後退「数百万人が貧困に逆戻り」危機感示す
私たちが5年にわたって支援活動をしているマダガスカルからも現地の窮状が届く。
日本人向けのツアーガイドをしている人たちが日本からの旅行客の激減で半年にわたって仕事がなくなっているという。ヨーロッパの新規感染者数の記録は日々更新され、日本でもこれから第2波の襲来すると予想される。世界的な終息が見えないなかで、彼らはもがき苦しんでいる。
マダガスカルのような開発途上国の場合、現地を良く知る外国語ガイドの存在は重要だ。彼らと一緒に旅することで、何倍もマダガスカルに触れ、知り、楽しむことができ、インフラが整っていないために起こる、日本ではありえないようなトラブルなどを、最小限に回避することができるのだ。
世界がコロナから回復したとしても彼らのような存在が地域から失われてしまえば、数少ない外貨稼ぎとなるツーリズムに関わる宿泊、交通、飲食、物産などの回復はおぼつかない。ひいては観光に依存していた地域に多くの貧困を生み出すことにつながるだろう。
世界の最貧国の一つであるマダガスカルは1日1ドル以下で暮らしている人が69%もいる。
私たちが現地での活動中に出会った小さな石を割って生計を立てている家族に話を聞いてみると、石を割ることで得られる日当はわずか150円ばかり。経済が落ち込むことで彼らの仕事が減ればあっという間に貧困が進んでしまう。
貧困は飢餓を生み、飢餓は命に危険をもたらす健康被害を呼ぶ。
SDGsの問題はこうして連鎖していく。
エコロジーオンラインでは現在、FAO、WFP、ユニセフの国連3機関と連携を進めて、マダガスカルでの栄養改善事業を実施する準備をしている。
私たちに残された時間はそう多くはない。新型コロナウイルスによって誰かがとり残されないように精一杯チャレンジをしたい。
エコロジーオンライン理事長 ・ライツフォーグリーン取締役 上岡 裕