長い梅雨が開けた8月に入ったとたん、猛烈な暑さに見舞われている日本各地。
8月17日には静岡県浜松市が41.1℃を記録し、これはこの夏一番、観測史上1位(2018年7月23日に埼玉県熊谷市でも同記録)でした。全国各地で連日35℃以上になるところが多く、自治体も注意を呼びかけています。
そして今月20日現在で、東京都内では131名の方が熱中症によって命を落としていると報道がありました。
不自然死を検案、解剖する東京都監察医務院によると、都内では8月12日〜19日までの8日の間に、50〜90代の男女28人が熱中症で死亡。この28人のうち70代が11人、80代が10人で70代以上のシニア世代が、全体の8割を占めています。
またこの28人のうち11人が夜間に、27人が室内で、そして25人はエアコンを使用していなかったそうです。
こうした中で、高齢者(65歳〜)に、熱中症に気をつけるように呼びかけています。が、ご本人たちは認知的、身体的、慣習・性格(個人差があります)で、エアコンを上手に活用できずにいることを、身近にいる人(家族や訪問スタッフ、民生委員(地域にもよる)、ご近所、友人知人など)は、知っておきたいです。
高齢者が熱中症になりやすい理由
○体内の水分量が成人期に比べると少ない
○喉の渇きを感じにくい
○体温調整機能が低下しているため暑さを感じにくい
○発汗、熱放散能力の低下
○慣習、思い込み、癖、性格
などが考えられます。
高齢期というのは、身体的、認知的部分が明らかに成人期とは違います。私たちが当たり前に感じる「暑い」「喉が渇いた」という感覚は神経系統が脳に身体状態を伝え、感じ、意識でき、行動として対応できます。
でも高齢期になるとこれがスムーズに、即反応できず、身体の熱を体外に放出することでできず、体内に熱が籠り、脱水を起こし、熱中症を引き起こす原因となります。
なので、意識的に水分を摂り、適温の環境を整えたいのです。(そのように整えることも周囲の大人が気をつけたいところです)
そして、「エアコンをつける」ということをなかなか受け入れらないのが、「慣習、思い込み、癖、性格」などによるもの。
「夏は暑いもの。我慢すればいい」
「電気代がもったいない」
と言い、エアコンがあるのにエアコンをつけない高齢者世帯もあります。今の高齢者が過ごしてきた夏と、近年の夏は暑さが明らかに異なります。熱帯夜などもおそらく体験してきていないので、説明できる状況であれば説明して、エアコンの利用を促したいです。
「寒いのが嫌」という声については、夏だから薄手の夏物に裸足という発想から離れ、春秋くらいの長袖や羽織るもの、靴下などの着用、そして直接冷風が当たらないように扇風機などの併用を工夫して、寒さを漢感じない環境作りを。
「電気代がもったいない」のは、個々の事情があります。その中で「そんなことを言わずにつけて!」と一点張りで押し切るというより、説明したり金銭的な話をしたり、エアコンだけでなく扇風機、送風機、保冷剤、外出(通所サービスや公的な場所などエアコンの利いている場所で日中は過ごすなど)を工夫、考えたいです。
高齢期の方で、認知症の症状の有無、種類、進行具合によっては、現実認識に開きがあり、現実的な暑さ対策や栄養、衛生面で本人任せにすることが難しい場合があります。そういうときは、家族だけで対応しようとせずに、自治体に相談。家族内で解決することよりも公的サービスがあるので、相談して利用しましょう。
室内で熱中症を防ぐ方法
○こまめに水分補給
○部屋に温度計、湿度計を置いて目で確認
○エアコン、扇風機などを使って暑さを和らげる
○風通しをよくする
○カーテンやすだれなどで日差しを遮る
○快適な服装で
「こまめな水分補給」というと、喉の渇きに任せて飲めばいいように聞こえますが、高齢期の方の場合、本人が「喉の渇き」がわからない時があるので、周囲の人は、少しずつでもいいので定期的に飲むように促します(トイレへ行くのが億劫に思い、水分補給を積極的にしたがらない場合もあるのが高齢期の特徴でもあります)。
また入浴前後には各1杯の水、寝る前にも1杯が推奨されています。それは夜間帯、就寝後に熱中症の発生が増えているため。夜中にトイレに起き、済ませたら布団に戻る前に1杯の水を飲んでもいいほど。そして枕元に水筒や蓋付カップに1杯の水分などを用意しておくことも忘れずに。
また、自立したシニアであれば、適切な温度湿度であれば、室内でも運動をして汗をかくことを勧めています。
日常的に運動する習慣があれば、体温調節能力の老化を遅らせることができます。これは運動直後にタンパク質と糖質を含んだ食品(例:牛乳1〜2杯)を摂ることで、血液量を増やし、熱放射能力が改善することが報告されています。
部屋の温度がわかる温度計をわかりやすい所に置いて、こまめに室内の温度を確認し、エアコンを上手に活用しましょう。
この夏、35℃以上の猛暑がいつまで続くがわかりませんが、「暑さ」で亡くなる人がいるということを改めて意識して、「自然災害」と認識した方が良さそうです。
高齢期の方は気をつけて、また周囲の私たちは見守っていきたいです。
文:井上晶子