アルツハイマーの発症を遅らせる認知予備力は、26歳までの学習体験と仕事、読解能力に大きな影響を受けることが知られている。
だが、アメリカ神経学会に発表された論文によれば、クラブ活動に参加したり、宗教グループで活動したり、スポーツや芸術活動を楽しむ社会的な活動にも大きな影響を受けることがわかってきた。
この研究はイギリスの1946年生まれの1,184人を対象にし、8歳と69歳になった時に100点満点の認知機能テストを実施。26歳までの学歴、43歳の時の社会活動、53歳までの経歴を統合した指標によって認知予備力を判断した。学歴と仕事に関係なく得た人生全般の学びの体験については、53歳の時の読解能力を加味している。
その結果、子どもの頃の認知スキルと高い認知予備力指標、高い読解能力は、69歳時の高い得点と関係が深いことがわかった。大学を卒業した人は一般の人より平均して1.22ポイント高得点で、生涯学習やクラブ、ボランティアなど6つ以上の社会活動に参加した人は4つまでの人にくらべて1.53ポイント高くなっている。また、高い能力を要求される専門職や中級程度の職種の人は、熟練したスキルを必要としない仕事をする人より1.5ポイント高かった。
著者のDorina Cadar博士 (PhD, Brighton and Sussex Medical School in the United Kingdom)は、認知機能は人生全般の活動によって影響を受け、知的に、社会的に、身体的にアクティブな暮らしをすることが認知機能の低下を防ぎ、認知症の予防につながることがわかったとし、かなりエキサイティングな結果だと表現している。
不遇な幼少期を過ごした人も人生を通して認知予備力を蓄えていけば、子どもの頃のネガティブな影響を受けずに済み、人生の後半において精神的な安定を得ることができるとしている。
よく学び、よく働き、よく遊ぶ。
認知予備力は人生を謳歌した人たちに微笑むのだ。
Education, job, and social life may help protect brain from cognitive decline