エコロジーオンラインというNPO法人を創立して21年が経った。栃木県佐野市を中心にグローバルな地球環境保護の仕事をしている。
社会的な活動をするNPOとして東日本大震災や熊本地震などの際は被災地支援も手がけた。
大きな被災を体験した社会は「自粛」という空気に包まれる。今回のコロナ禍では感染予防対策もあって不要不急な行動の「自粛」が叫ばれた。
自分が最初に働いたのは音楽業界だった。そのため音楽の仲間たちとともにNPO活動を手がけてきた。
中心的な活動となったマダガスカル支援もそんな音楽を有効活用している。
マダガスカルはアフリカ東端の島国で森林荒廃に苦しんでいる。その根底にあるのが教育の欠如だ。その問題を解決するため、森の大切さを訴えるCDをつくり、歌と踊りで伝えることを考えた。曲を活用して楽しく植林活動を進めようと思ったその矢先、コロナ騒動が起きた。次はいつマダガスカルを訪問できるのか。まったく先が見えなくなった。
【ダレシア 】音楽で SDGsを! マダガスカルの子どもたちと歌って、踊って、森を守ろう!【報告動画】
こういう非常時は文化の脆さを痛感する。直接的に命に関わる仕事をする人たちにくらべると僕らの活動は見劣りする。被災して困っている人に対して自分たちは無力だと思ってしまうミュージシャンも多い。
だが、そんなつらい時だからこそ、音楽文化は人の心を支える。熊本地震の際には八代亜紀さんと傷もまだ生々しい熊本を訪ねた。痛々しい姿をさらす熊本城に向かって歌う八代さんの歌声に多くの人の目に涙が浮かんだ。音楽はこうして人の痛みに寄り添う。そう強く感じた瞬間だった。
アメリカの小説家スティーブン・キングはコロナ騒動のなかでこうツイッターでつぶやいた。「もし君がアーティストが不要だと思うなら、隔離生活のなかで音楽、本、詩、映画、絵画無しで過ごせるか試してごらん」
確かにそうだ。むしろ「不要不急」を避ける暮らしで疲れた心をしっかりと支えるのが文化だ。コロナ禍で傷んだ文化の根をいかに再生するか。気候危機や新たな感染症など持続可能な社会づくりを阻む脅威に立ち向かうためにも一刻の猶予も許されない。
ライツフォーグリーン取締役 上岡裕