2年ほど前、ミュージシャンかの香織さんから、認知症ケアに音楽を活用する米Music & Memoryの活動を追いかけた「パーソナルソング」という映画をご紹介いただき、音楽が認知症の皆さんに癒しを与えることを知り、介護施設などに音楽を届ける様々な努力をしてきました。
そこでぶつかったのがエヴィデンスという壁でした。医療機関に手がけてもらうためには、音楽が認知症のケアに活用できるというエヴィデンスがないと難しい。介護に関わる皆さんは、経験的に音楽の効果を知っているのだけれど、エヴィデンスがまだ整理されていないのが現状です。そうしたエヴィデンスの整備も含め、お医者さまにも関わってもらって、具体的な事例を積み上げることを目的にこれまで活動をしてきました。
その結果、私たちが日本で手がけたMusic & Memoryのトライアル事業が、地域医療ジャーナルの皆さんの手によって、日本質的心理学会のポスターセッションに出展されることになり、沖縄のパーソナルソング上映会をオーガナイズしてくれた医療法人の皆さまには日本認知症予防学会をご紹介いただきました。
日本認知症予防学会では、認知症予防を銘打つ商品やサービスが多くなり、学会としてエヴィデンスの提供に貢献しようとエヴィデンス創出委員会が生まれています。
日本認知症予防学会エビデンス創出委員会
エヴィデンス創出委員会のページを見てみると、「音楽療法」についての次のようなエヴィデンスが発表されていました。
音楽には様々なレベルで認知症の予防効果がありそうですが、楽器演奏をすることで認知正常者から認知障害への1次予防効果があると表現されています。
ただ、楽器の演奏は良いけれど、楽器をそろえる手間がかかる。そこで楽器よりも手軽な手拍子リズムトレーニングを手がけていた長野佑亮さんに声をかけました。
ほぼ同じタイミングで日本認知症予防学会エビデンス創出委員会委員長の阿部康二先生(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学教授)が、楽器演奏と同様の効果をもたらすものとして、歌を歌いながら手拍子をすることをすすめていることを知りました。その事例がビートたけしさんの「家庭の医学」で紹介され、音楽関係者の話題になっています。
歌を歌ったり、カウントを数えたり、他のメンバーとリズムをあわせることが、同時に脳の複数部位を動かすことになり、認知症の予防につながっていたわけです。
私たちもまだ手拍子リズムケアを始めたばかりですが、高齢者の皆さんと手拍子リズムを一緒に楽しむことで、認知症予防の取り組みを、少しでも前に進めて行ければと思っています。
コンテンツフォーケアディレクター 上岡 裕