はっぴいえんどと並び立つ偉大なグループ五つの赤い風船のリーダー西岡たかしの放ったURC第2弾シングル。
「遠い世界に」に代表される比較的前向きな作品を主に発表していた五つの赤い風船の活動の合間に西岡はポツポツと録音を残している。
それは、思いがけなく時代の申し子と化してしまった赤い風船の活動での鬱憤を晴らすかのように暗く、前衛的な作品群であった。
「砂漠」は第1弾シングルよりもシンプルな弾き語りで幾分か聞きやすくなっているが、赤い風船でのヒット曲「遠い世界に」と偶然にも対照的な歌詞と曲調だ。
たとえば「砂漠」では、
コンクリートに囲まれた現代の街を「砂漠」と表現し、
「この世界とは違う世界」の「本物の大地」に触れるために「暗い海」に「一人で船出」するという構成となっている。
一方「遠い世界に」は
「遠い世界」に旅に出ようか / 赤い風船に乗って「雲の上」を歩いてみようか / 「僕たち若者」 / 「みんなで歩こう」などそれぞれに対照的な言葉が入っている。
「遠い世界」というのは遠いだけであって地続きなことが伺えるが、「砂漠」では異世界のことを歌っているように思える。
同様に「雲の上」に「本物の大地」「暗い海」、「みんなで歩こう」に対して「一人で船出」と、レコーディング時期なども鑑みれば「砂漠」は、実質的に「遠い世界に」の裏返しと言ってもいいだろう。
「私の足は地に浮いている」「私の肌に感じる土が欲しい」という節から考えると、五つの赤い風船の活動に重圧を感じていたのではないだろうか。
西岡たかしはあまりにも明るい「雲の上」から「本物の大地」に降りたくなったのかもしれない。
文 / 上岡 賢