認知症患者の行動異常「BPSD」に効果的な世界で初めての非薬物療法 それが「演劇情動療法」
10月27日、東京の信濃町で行われた日本演劇情動療法協会による演劇情動療法講習会に参加しました。
初めに「認知症を正しく理解する。演劇情動療法の可能性」と題して東北大学医学部老年科臨床教授 藤井昌彦先生から認知症の現状のお話があり、その後俳優でもあり日本演劇情動療法協会理事長の前田有作さんからは、実際に医療介護として演劇を使った現場でのお話がありました。
認知症は「後天的な脳障害により、一度獲得した知的機能が自立した日常生活が困難になるほどに持続的に衰退した状態」と定義されている。従って「日常生活がなんとか過ごせていれば認知症ではない」ということになるそうです。
まずここから、「なるほど」とうなずくお話が始まりました。
認知症患者が施設などに入所する理由は、暴力、介護抵抗などの精神行動異常、反社会的行動(BPSD)により自宅での介護が困難になるため。
物忘れがあっても穏やかに生活できていれば認知症であっても何も問題はないのだそうです。
病院で認知症かどうかを診断する際に認知機能検査が行われますが、これは記憶や計算、言語能力を検査する「新皮質」の部分のテスト(MMSE)です。これは年齢とともに退化する部分。
ここで脳のお話。
永久にわからないとされている人の脳ですが、現在わかっている範囲で示せば人の脳は、外側に存在する知識を司る「大脳新皮質」と内側に存在する情動を司る「大脳辺縁系」に大別されます。
藤井先生は、それにプラスして情動を司る「大脳辺縁系」の部分をテストする「情動機能検査」(MESE)を作成。このテストによって五感と総合的な情動機能の高さを知ることができるそうです。
認知症の方は「新皮質」が退化し、「大脳辺縁系」が敏感になっている方が多いので感情などの感性が鋭くなっています。
情動機能を高めることによって問題行動(BPSD)が抑えられるのではないかと考えた藤井先生は、演劇などで情動満足度を上昇させ「大脳辺縁系」を活性化させる演劇情動療法を前田さんとともに始めました。
実際に仙台の藤井先生の病院で4年前から朗読による情動療法を行っている前田さんからは様々な体験談が話されました。
「また来ました。と患者さんが言ってくれるのはとてもすごいこと。それは前に来たことを覚えているということだから」
プロの役者さんなので朗読を読むのは難しくないと思いますが、認知症の患者さんたちの前でのセッションなので、その場その場で状況が変わったり反応が意表を突いたり、と対応は大変だったようです。
でも今まで何も話さなかった患者さんが朗読後にみんなと会話をしたり、暴力的だった方が穏やかになったりするのを目の当たりにされているので、薬を使わない「演劇情動療法」の効果を実感されていました。
。。。とても内容が広く深く、簡単にレポートにまとめるのは難しい内容でした。今後も勉強し続けていかなければいけないテーマです。
ライツフォーグリーン代表 上岡 七生美