低迷するバンドを救った起死回生の作品「Surf’s Up」。その冒頭に収録されている1曲。
ブライアン・ウィルソンはビーチボーイズの柱である、そしてもう一本の柱がマイク・ラヴだ。
内向的なブライアン、外向的なマイクの二人が合わさってビーチボーイズは美しいハーモニーを奏でている。
この曲は非常に奇妙な境遇にある。アルバムタイトルで「波が来てる」と言っておきながら、「水(海)に近づくな」と突き放される。他ならぬThe「Beach」Boysのアルバムで、だ。
もちろんこれには理由がある。
70年代は愛と平和が退行した年であり、音楽もそれを表すように非常に暗くなっていった時代だった。
前作で愛と平和をテーマにして“大失敗”した彼らは、売り上げのため仕方なく新しいマネージャーと共にメッセージソングを作成することになったのだ。
しかし意外にも乗り気だったのはマイク・ラヴ。彼は当時としては珍しく、環境問題に関心を持っていた数少ないミュージシャンだった。
歌詞は水を救うために今すぐ意識を変えようじゃないかという割と控えめなもの。とはいえ、70年代に環境問題を歌ったことはかなり重要だ。
文 / 上岡賢