RADIO BERRYで放送中の「ミュージックメモリー 〜音楽のSDGs」担当のケンです。
今日ご紹介するのは大滝詠一「オリーブの午后」です。
彼といえばアメリカの音楽プロデューサーフィル・スペクターに影響を受けた「ウォール・オブ・サウンド」が有名ですが、この曲ではちょっと変わったアプローチを取っています。
発表された1982年は音楽史に残る名盤「A LONG VACATION」が発売された翌年。
リゾートをイメージしたアルバムジャケットとは裏腹に失恋の歌がほとんどを占める、ほのかに薄暗い感触をもった不思議なアルバムでした。
この曲が収録されたアルバムは1982年発売の「NIAGARA TRIANGLE Vol.2」。
当時新人だった佐野元春と杉真理という豪華なメンバーを大滝が誘って作られた企画盤でした。
山下達郎、伊藤銀次との「NIAGARA TRIANGLE Vol.1」では各々自由に制作されたオムニバス企画でしたが、Vol.2では3人に共通したバックグラウンドということでリヴァプール・サウンドをテーマに制作されました。
ところが、「オリーブの午后」は間奏にマンドリンも登場し、リヴァプールというよりも「A LONG VACATION」にトロピカルな風味を足したような明るめな作品になっています。
Vol.1の時にも「夜明け前の浜辺」というサーフバラードを担当していたことを考えるとテーマ性より企画立案者としてアルバムの全体構成を考えてのことなのかもしれません。どちらの曲にも波の音が入っていることが興味深いですね。
次回作の「EACH TIME」では曲調まで哀愁が漂ってしまうことをかんがみると、この時期の企画アルバムだからこそできた明るい曲調のナイアガラサウンドなのかもしれませんね。
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